飲食店や小売の現場では、遅刻・欠勤管理、スタッフ育成、日報・月報など、「人の手」に依存したルーチン作業が山ほどあります。
気づけば本来やるべき“売上アップの施策”や“スタッフ育成”ではなく、集計や報告に追われている、そんな状況になっていないでしょうか。
そこで本記事では、Googleが提供するGoogle Apps Script(GAS)を使って、
飲食店・小売の現場でよくある
- 遅刻・欠勤管理の集計
- スタッフ育成レポートの作成
- 日々の定型報告
といった業務を自動化・仕組み化する方法を、実体験ベースでわかりやすく解説します。
筆者が実際に構築した「スキルのレーダーチャート可視化」や「遅刻欠勤レポートのBOT自動送信」の事例も紹介しますので、
現場に落とし込むイメージを持ちながらお読みください。
Contents
目次
- 飲食店・小売の現場は“人の手”に依存しすぎている
- Google Apps Script(GAS)とは?
- GASの基本的な使い方(導入ステップ)
- GASでできる飲食店・小売の業務効率化
- 実務で使えるGAS活用アイデア10選
- 図解① GASの構造(Googleサービスとの関係)
- 図解② 自動化ワークフロー(入力→処理→出力)
- 【体験談①】スキル見える化システムでスタッフ育成が変わった
- 【体験談②】遅刻欠勤レポートをBOT化し、庶務負担を大幅削減
- GAS導入のメリット|現場の課題を「仕組み」で解決する
- まとめ|飲食店・小売の業務改善はGASで進化する
飲食店・小売の現場は“人の手”に依存しすぎている
遅刻・欠勤管理の負荷
店舗ビジネスでは、人がシフトで回している以上、遅刻や欠勤は一定数発生します。
問題は、それを「誰が」「どのタイミングで」「どう集計するか」です。
よくあるのが、庶務スタッフがスプレッドシートを見ながら1件ずつ集計し、責任者に報告するフローです。
遅刻・欠勤が多い日やスタッフ数が多い店舗では、それだけで30分〜1時間かかることもあります。
スタッフ育成の“見える化不足”
さらに、スタッフ育成も属人的になりがちです。
ライセンス制度やチェックリストがあっても、
- 評価が「合格・不合格」だけ
- どこが強みで、どこに課題があるかが見えない
- 前回からどれくらい伸びたのかがわからない
といった理由で、合格した瞬間に成長が止まるケースも少なくありません。
Google Apps Script(GAS)とは?
Google Apps Script(GAS)は、Googleが提供するクラウド型のスクリプト実行環境です。
プログラミング言語はJavaScriptベースで、以下のようなGoogleサービスを自由に連携・自動化できます。
- Googleスプレッドシート
- Gmail
- Googleフォーム
- Googleカレンダー
- Googleドライブ
- Google Chat など
イメージとしては、「Googleサービスをまとめて操作できるリモコン」のようなもの。
一度スクリプトを書いてしまえば、あとは24時間自動で動き続けてくれます。
なぜ飲食店・小売と相性がいいのか
飲食店・小売の現場には、次のような特徴があります。
- 日次・週次のルーチン業務が多い
- スプレッドシートや紙で管理している情報が多い
- 現場スタッフは忙しく、ひと手間がどんどん後回しになりがち
これらはまさにGASで自動化しやすい領域です。
「人がやっていたチェックや集計」をGASに置き換えることで、現場の負担を大幅に削減できます。
初心者でも導入できる理由
- JavaScriptベースで、Web上に日本語情報も豊富
- サンプルコードをコピペして少し変えるだけでも十分実用レベル
- ブラウザ上で完結し、追加インストールが不要
- 無料で使える(GoogleアカウントがあればOK)
GASの基本的な使い方(導入ステップ)
STEP1:スプレッドシートを開く
まずは、実際に使っている売上表やシフト表など、業務で使っているスプレッドシートを1つ開きます。
STEP2:「拡張機能」→「Apps Script」をクリック
スプレッドシートのメニューから「拡張機能」→「Apps Script」を選択すると、
新しいタブでGASのエディタ画面が開きます。
STEP3:サンプルコードを貼り付ける
まずは「動かしてみる」ことが大事です。以下のような簡単なサンプルから始めます。
function hello() {
Logger.log("Hello GAS!");
}
STEP4:実行ボタン(▶)を押す
画面上部の▶(実行)ボタンをクリックします。
初回は権限の許可が求められるので、案内に従って承認します。
STEP5:トリガー設定で“完全自動化”へ
GASの真価は、トリガー機能にあります。
- 毎日朝9時に実行
- シートが編集されたタイミングで実行
- フォーム送信時に自動実行
こうした条件を設定することで、人がボタンを押さなくても勝手に動く仕組みを作れます。
GASでできる飲食店・小売の業務効率化
① 遅刻・欠勤レポートの自動集計
スタッフの出勤状況をスプレッドシートに記録しておけば、
GASが「誰が、いつ、何回遅刻・欠勤したか」を自動で集計し、責任者向けのレポートを生成します。
② スキル評価レポートのレーダーチャート化
ライセンス試験や評価項目をフォーム化し、
送信された内容をGASで処理してレーダーチャートとして可視化することで、
スタッフ育成のPDCAを回しやすくなります。
③ シフトや情報共有の自動化
シフト表をもとに、Googleカレンダーへ自動登録したり、
当日の担当者をChatに自動通知したりといった運用も可能です。
実務で使えるGAS活用アイデア10選
- 日次売上レポートの自動メール送信
- 遅刻・欠勤一覧の自動集計とChat通知
- スタッフスキル評価のレーダーチャート自動生成
- Googleフォーム+GASで簡易CRM(顧客管理)構築
- シフト表からGoogleカレンダーへの自動登録
- 在庫数がしきい値を下回ったときの自動アラート
- 定例ミーティング用アジェンダの自動生成
- 重要スプレッドシートの定期バックアップ(自動コピー)
- 問い合わせメールのスプレッドシート自動一覧化
- ブログ・SNSネタ管理シートの「今日やるべきタスク」抽出と通知
① GASの構造(Googleサービスとの関係)
ここでは、「各Googleサービス → GAS → 自動化されたアウトプット」という構造を示します。
スプレッドシート・Gmail・フォーム・カレンダーなどから矢印がGASに集まり、
そこからレポート・通知・カレンダー登録などが出ていくイメージです。
② 自動化ワークフロー(入力→処理→出力)
次に、「入力 → スクリプト処理 → 出力」というワークフロー全体を整理します。
例えば、
「フォーム入力 → シートに保存 → GASで集計 → Chatへ通知」
という流れがわかると、読者は自分の現場に当てはめやすくなります。
【体験談①】スキル見える化システムでスタッフ育成が変わった
私は長年、店舗スタッフの育成に携わってきました。
その中でずっと感じていた課題が、ライセンス制度の評価方法です。
現場では、スタッフのスキルを判断するためにライセンス制度を導入していましたが、
評価は「合格」か「不合格」かの2択のみでした。
この仕組みには、もちろんメリットもあります。
- 合格を目標に、スタッフが一時的に集中して頑張る
- 一定以上のレベルに達しているかどうかをシンプルに判定できる
一方で、現場で運用する中で次のような弊害も見えてきました。
- 合格するまでは頑張るが、合格した瞬間に成長が止まってしまうスタッフがいる
- 「どこがどれくらいできていないのか」が本人に伝わりにくい
- 育成側も、行動レベルまで落とし込んだフィードバックがしづらい
つまり、ライセンス制度そのものは悪くないものの、
「合格=ゴール」になってしまい、その先の成長が見えにくいという構造的な問題があったのです。
GASで「スキルの見える化システム」を自作
そこで私は、合格後も成長し続けられる仕組みを作るために、
Google Apps Script(GAS)とGoogleフォーム、スプレッドシートを組み合わせた
「スキル可視化システム」 を構築しました。
既存のライセンス試験で使っていた項目(例:笑顔・挨拶、自身の雰囲気、環境美化、関係性構築 など)を5段階評価にし、
Googleフォームから入力できるようにしました。
フォームの回答は、GASを使ってスプレッドシートへ自動で蓄積され、
日付・氏名・各項目のスコアが1行ごとに記録されます。
さらに一歩進めて、GASでスコアを集計し、
各スタッフごとのスキルをレーダーチャートで可視化する仕組みも組み込みました。
フォームを送信するたびに、スプレッドシート上で
「笑顔・挨拶」「環境美化」「指示出し」「関係性構築」などの項目が
グラフとして一目でわかる状態になります。
導入後の変化
- 成長が数字とグラフで見えるようになり、前回との比較がしやすくなった
- フィードバックが「もっと頑張ろう」ではなく、具体的な行動レベルに落ちた
- 合格後も「伸びしろ」が見えるため、モチベーションが維持されるようになった
- スタッフ自身も「自分はちゃんと成長している」と実感しやすくなった
GASというと「事務作業の自動化」のイメージが強いですが、
実際には「人材育成の仕組み化」にも大きな力を発揮すると実感しています。
【体験談②】遅刻欠勤レポートをBOT化し、庶務負担を大幅削減
もう一つ、私が現場で直面していた大きな課題があります。
それは、遅刻・欠勤者の集計と報告業務が庶務スタッフに大きな負担になっていたという点です。
当時は、スタッフの遅刻や欠勤を庶務スタッフがスプレッドシートから手作業で集計し、
それを私へチャットで報告してもらうという運用をしていました。
しかし、現場では次のような問題が発生していました。
- 遅刻・欠勤者が多いと集計に時間がかかる
- 庶務が“集計だけ”に時間を奪われてしまう
- 報告が遅れる → 店舗責任者としての対応も遅れる
- 結果的に、店舗運営に支障が出るケースも発生
遅刻や欠勤へのアプローチが遅れると、
「働く側の意識の低下」や「サービス品質の低下」にもつながり、現場全体に影響を与えます。
GASで「翌朝自動レポート」仕組みを構築
この問題を解決するために、私は Google Apps Script を使って
「遅刻・欠勤レポート自動送信システム」を構築しました。
庶務スタッフは、これまでどおりスプレッドシートに出勤状況を入力するだけ。
あとはGASが、翌朝の定刻になるとBOTとしてChatにまとまったレポート文章を自動送信します。
レポートには、例えば以下の情報が含まれます。
- 当日の遅刻者一覧
- 欠勤者一覧
- 累計回数・傾向などのサマリー
導入後の効果
- 庶務スタッフは「入力するだけ」でよくなり、集計・文章作成・送信の手間がゼロになった
- レポートが毎日同じ時間に自動で届くので、報告遅延がなくなった
- 遅刻・欠勤へのアプローチを早いタイミングで実施できるようになった
- 結果として、現場の意識改善やオペレーションの安定につながった
GASは、こうした「現場の小さな負担」を根本から解決してくれるツールです。
単に時間を削減するだけでなく、対応のスピードと質を同時に上げてくれるのが大きな価値だと感じています。
GAS導入のメリット|現場の課題を「仕組み」で解決する
- コストゼロ:Googleアカウントさえあれば無料で使える
- 導入が早い:ブラウザだけで完結し、インストール不要
- 現場と直結:売上・勤怠・育成・在庫などをそのまま自動化できる
- 人的ミスの削減:手作業の集計・転記ミスを防げる
- 属人化の解消:「あの人しかできない仕事」をスクリプトに落とし込める
- 意思決定の速度アップ:必要な数字やレポートが自動で揃う
まとめ|飲食店・小売の業務改善はGASで進化する
飲食店・小売の現場は、「人が頑張ってなんとかする」文化になりやすい領域です。
しかし、遅刻・欠勤管理や育成レポート作成といったルーチン業務は、
人の根性ではなく仕組み(GAS)に任せる時代になっています。
本記事で紹介したように、
- スタッフのスキルをレーダーチャートで見える化する
- 遅刻・欠勤レポートをBOTで自動送信する
といった仕組みは、GASを使えば中小規模の店舗でも十分に実現可能です。
まずは「日次売上レポート」や「遅刻欠勤の簡易集計」など、
小さなところからGASを試してみてください。
一度「仕組みが回り始める快感」を知ると、もう手作業には戻れなくなります。
飲食店・小売の業務効率化に悩んでいる方は、
ぜひGASを“現場の相棒”として取り入れてみてください。



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